9月30日、約20年勤めた会社を退職いたしました。
大学を出てすぐに入社した会社です。
入社して2〜3年間は何も考えず目の前にある仕事のみに忙殺されていました。
月商5〜600万円位の数字を持って朝から晩まで忙しく営業をしていました。
今と少し違うのは薬局ではそんなに積極的にジェネリックを使っていませんでした。
なので開業医のドクターを中心に営業を掛けて値段が安いと言って使ってもらっていました。
薬価の40%引きや50%引きでした。
市場が大きい高脂血症などは更に安くで販売していました。
今は無き大洋薬品・大正薬品工業などが値段が安くてたくさん販売していました。
沢井製薬は良くも悪くも今と変わらず高かったです。
その頃はあまり広域卸はジェネリックを売っていませんでした。
ゾロゾロと言ってバカにしていました。
平均売利も高く20%前後でした。
それが一変したのが小泉内閣の時に竹中平蔵さんが始めた“骨太の方針”でした。
ジェネリックを増やそうという内容が初めて明記されました。
各メーカーはシェアを取るために更に価格帯が下がりました。
価格帯が下がっても販売数量が増えるので売上は右肩上がりでした。
ジェネリックは最初は先発品の薬価の80%の薬価がついていました。
ジェネリックは儲かるぞと思ったのか、たくさんの会社が参入してきました。
いわゆる先発系のメーカーがジェネリックも作るようになりました。
ジェネリックの市場は年々拡大して行きました。
たくさんの大型の特許切れの薬剤のジェネリックが毎年発売されていました。
薬価収載は年に一度で7月に発売されていました。
会社も規模を拡大していき、近畿地区に4か所の拠点を構えるまでになりました。
年々、競争が激化していき値段合戦になっていきました。
日本政府はこの状況を見てジェネリックの薬価にメスを入れていきました。
初めて発売される成分のジェネリックの発売時の値段が先発品の80%→70%→60%と
下がっていき、現在では50%となり、10社以上のメーカーが発売する場合は40%になっています。
競争の激化を誘発して薬の値段下げていくという国の政策は大成功となりました。
問題が起きたのは4年ほど前の事でした。
小林化工という会社が製造した水虫薬に他の薬の高濃度な成分が混入し
その薬を服用した患者さんが死亡するという事故が起きました。
その当時は単純な人為的ミスと思われていましたが、
この事故の原因には私は間接的に日本政府の政策にあると思います。
これはこの医薬品業界だけではなく他の業種にも同じ構造があり同じようなことが起きています。
過度の競争は最初のうちは業務の効率化などにより他者と差別化が可能でしたが、
その効率化にも限界がくると、会社からのプレッシャーから不正をしてまで
効率化を追求するということが常態化していき、それがいつの間にか常識となる。
事故が起きるまではその状態が蔓延し、ついにその不正が事故という形で表面化した。
小林化工の事件も2人でやっていた作業を1人でやっていたことにより起きたそうです。
この小林化工の事件以後、製薬メーカーの従業員から内部告発などが相次ぎ、
大手メーカーの日医工が不正を発表し、今に続く薬の供給不安がスタートしました。
厚生労働省は各メーカーに不正がないか点検を開始し、その後、数社に違反行為が発覚し
行政処分をメーカーに課しました。
処分を受けたメーカーは市場の信頼を失い、経営難に陥りました。
それだけでは事態は収集されず、薬の供給量が激減したため患者さんが
薬が手に入らない事態に発展しました。薬は製造から患者さんに届くまで
1年近くの時間がかかるそうです。増産を開始しても市場に製品を投入するまで
1年近くかかるという事です。当初は2年くらいで正常化すると言われていましたが、
新型コロナにより海外から原材料が入らなかったり、現在は円安により原材料の
高騰によりメーカーさんが赤字に陥ってしまい、薬の供給減が続いています。
普通であれば円安や人件費が高騰すればその部分を販売価格に転化して値上げをしますが、
この業界は国が薬の値段を決めているため自由に値上げができません。
そのため民間企業の製薬メーカーは赤字の製品の製造を減らしたり、製造を辞めたりします。
最近の供給不安は原材料や賃金上昇による人件費の高騰が大きな原因です。
メーカーは卸に対して仕入れ価格を上げてきますが、我々、医薬品卸は国が決めている薬価と
メーカーの仕入れ価格の間で利益を上げています。
分かりやすく言うと天井(薬価)が下がっていますが、床(メーカーからの仕入価格)が上がっている
状態で我々卸業者は押し潰されそうになっています。
皆さんはこの状況を加味してどうすべきだと思いますか。
今の会社の社員の中にはまだメーカーに仕入を下げるように言っている人がいますが、
本当にそれが正しいのでしょうか?
私は違うと思います。メーカーが儲からないと風下の私たちは恩恵をもらえない。
メーカーに仕入れ価格を下げさせることは、また小林化工や日医工のような不正を
起こさせる原因となります。
会社に残った営業諸君には是非、薬の安定供給を担う者としてメーカーに
仕入価格を下げさせるのではなく、得意先に高く販売し薬価を維持もしくは上がるように
全力で訴え、医療業界全体を巻き込んだムーブメントを起こして欲しいです。
人は健康でないと働けません。その健康を担う医療業界の発展はこの国の発展の基礎です。
半導体は機械で作ります。その半導体は人が豊かに暮らすためのものです。
自動車は人が安全に早く移動するための道具です。
人がいなければそれは無用のものです。
営業諸君にはその信念を持って困難に立ち向かって欲しいです。
これを私からのエールだと思っていただければ幸いです。
我が社では伝統なのか朝礼で営業社員は起立して聞いています。
社長がいる時はすぐに座らせてくれますが、
それ以外の時は立ったままで長い時には10分以上話を聞きます。
周りを見ると朝は忙しいのでパソコンを立ったまま操作している人もいる。
我慢しないといけないのでしょうか?
またいかにも体調不良と思われる人がいるにも関わらず
配慮をしたり、本人も遠慮をしたりしない。
労働安全衛生法を理解しているのでしょうか?
配慮義務違反で犯罪です。
それで周りが体調不良になるのは傷害罪です。
しっかり意識して下さい。
ただでさえ忙しくて定時に仕事が終わらないのに月に3万くらいの経費を削減するために
仕事を増やしたりしますが(請求書の郵送)
仕事が忙しくなる=この仕事をしたいと思う人が減る。→離職者が増える。必然です。
そんな細かいことを考える時間があるなら事業を拡大することに専念すべきです。
経費削減も大事ですが、事業を拡大させることや新しい事業を始める事に
力を注いでください。
私からの応援メッセージです。
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